1970年、後にサクマ製菓を代表する商品となる一つのキャンデーが生まれました。発売から40年近くたった今でも、世代を超えて愛され続ける「いちごみるく」誕生の秘密にせまります。
1964年、飴の中にチョコレートを入れるという業界初の試みで、「チャオ」をヒットさせていたサクマ製菓。この成功により、飴の製法に対するこだわりを強くしたサクマ製菓は、次なる商品の開発に動き出していました。
開発チームが組まれ、頭を悩ます日々の中、一つのコンセプトが生まれます。
「カリッと食べられる、噛む飴を作ろう」
当時の飴は、粒が大きく舐め終わるのにとても時間がかかっていました。カリッと噛み砕くことができれば、早く食べ終わることができます。ちょっと食べたいときや時間がないときにも気軽に食べてもらえるのではないか、そう考えたのです。
また、当時は飴といえば「舐めて、そのフレーバーを楽しむもの」。フレーバーではなく、食感を意識した「噛む飴」というコンセプトは、ほかにはない画期的なものでした。
こうして「噛む飴」というコンセプトのもと、その試作がはじまります。
サクサクと噛める飴にするためには、どうすればいいか。「飴を層にして、薄い飴でくるむ」という飴の構造はすぐに思いつきました。しかし、その実現には困難が伴いました。なぜなら、当時の飴作りは職人による手作業。飴を層状にするためには、砂糖と水飴を煮詰め、できた飴を職人が二人がかりで、折り重ねていく必要があります。
飴は熱過ぎるとドロドロ状態、逆に冷え過ぎると固くなり、伸びなくってしまいます。この温度の調節や飴を折り重ねるタイミングがとても難しいのです。何度も試作を行い、失敗を繰り返しながら、ついに層状の飴が完成します。
層状の飴を包む薄い飴のフレーバーは、当時の子どもたちに人気があったイチゴ味に決定。中の層状の飴は、イチゴによく合うミルク味を組み合わせることに。そうすることで、口に入れたときにはイチゴ味、噛んだときにはイチゴミルク味が楽しめます。フルーツとミルクの組み合わせも当時は珍しいものでした。
発売にあたって、パッケージには、黄色とピンクのいわゆるサイケ柄と呼ばれる特徴的なデザインが採用されました。当時の常識では考えられない、この斬新なデザインには反対の声も多く聞かれました。しかし、当時の社長の後押しもあり、このデザインでの発売が決定します。開発から発売まで、実に1年の歳月が流れていました。
1970年8月、ついに「いちごみるく」の販売が開始されます。しかし「飴は舐めるもの」という考えが常識だった時代。食べる飴、噛む飴という、新しいコンセプトは、すぐには受け入れてはもらえませんでした。一軒一軒、街のお菓子屋さんを回り、商品をお店に置いてもらうための地道な営業活動が続きます。そうした努力の結果、だんだんと「噛む飴」というコンセプトも伝わり始め、「いちごみるく」のやみつきになる食感とおいしさ、一度見ると覚えてしまう斬新なパッケージが功を奏し、徐々に人気に火がつき始めます。
そして、その地位を不動のものにしたのは、サクマ製菓が提供した日本テレビの子ども番組「とんだりはねたり」に「いちごみるく」が採用されたことでした。子どもにおやつを渡すシーンに「いちごみるく」が繰り返し登場すると、子ども向けの飴としての認知度が一気に広がっていったのです。
こうして大人気商品となった「いちごみるく」。その後、数度の改良を重ねて現在にいたります。1992年からはイチゴ果汁が加わり、より甘酸っぱいフレーバーに。現在は、国産「あまおう」の果汁がたっぷりと使用されています。世代を超えて、おいしさを届け続ける「いちごみるく」も、変わりゆく時代のニーズに合わせて変化し続けています。
実は、姉妹品として、ひんやり冷たい「夏限定のいちごみるく」、チョコレートをコーティングした「冬限定いちごみるく」など、期間限定の「いちごみるく」も発売されているんです。
季節を通じて楽しめるキャンデーとして、また次の世代に受け継がれる商品として、進化を続ける「いちごみるく」にご期待ください!